何故スレート材をお薦めしないのか
スレート屋根にスレート材でのカバー工法はできません。(一般名:スレート材、商品名:コロニアル、カラーベスト、フルベスト、薄型化粧スレート等)
技術的には可能ですが、メーカーが保証しないです。理由は材料が割れるからです。また、既存のスレート材を撤去しても、メーカーの保証を受けるには施工基準をクリアーする必要があります。これについて解説します。
KMEW社のメーカー保証の条件
屋根業界での保証は、2つあり、屋根材のメーカー保証と施工した業者の施工保証です。
一般木造住宅のスレート材を製造しているのは、KMEW一社で、ここのメーカー保証(材料保証とも言います)は、結構厳しいもので、まず、保証の条件を読むと、重ね葺きでは保証できない、リフォームでは、既存のスレート材は必ず撤去し、KMEW社の定めるマニュアルの通りに下地材から施工することが条件となっています。
◉既存の屋根材がスレート、コロニアル、カラーベストの場合、この上にスレート材を重ねるとメーカーの保証は無くなります。
◉スレート材ではメーカーの保証を得るには、既存のスレート材を撤去しルーフィングも撤去しなければならない、また下地材が9mmなら、12mmに交換し、KMEWのマニュアルに従った施工でなければならないです。
このようにスレート材を施工するにはいろいろ面倒なことがありますので、屋根屋は嫌がりますし、お客様も敬遠しています。またカバー工法を希望するお客様はスレート材を使えません。
スレート材の材料保証について更に詳しく
施工の瑕疵・不具合の保証は施工会社、スレート材のメーカー・KMEW社は、メーカー保証として材料の保証をします。このメーカー保証は、様々な条件があります。「COLORBEST」製品での条件とは;
- 保証書が発行された新築物件であること
- 施工チェックリストが提出された物件であること
- KMEW社の定めた「設計施工マニュアル」に従って設計施工された日本国内の物件であること
この内1つの条件を満たす物件について、工事の元請け業者に対して保証書が与えられます。そうメーカーの保証はお客様ではなく施工業者に対して与えられます。リフォームの場合は、2か3の条件を満たす必要があります。つまり設計施工マニュアルに従った施工であることです。そして保証の内容は;
- 本製品自体の不具合による室内への雨水の侵入がないこと
- 本製品の色感が著しく変化しないこと(表面の美観のことを言っています)
保証期間は;
- の場合は;10年
- の場合は;2年です。
では、10年未満での「COLOEBEST」の反り、ヒビ、欠けなどの不具合は、保証の対象になるのか? 下の写真は、今のCOLORBESTではなく、以前の製品で「コロニアルNEO」という製品です。いたるところにヒビが入っています。築8年です。クボタ(株)、現KMEW社のアスベストなしのスレート材です。
この屋根は全体が60㎡程度の広さで、16箇所のヒビがありました。外観的には色の変色もあり、結構見苦しかったです。コロニアルNEOについてのメーカー保証は今となってはわかりませんが、家を建てた建設会社は、メーカーとかけあって材料のみの支給、16枚、施工は有料と言ってきています。
相談は8年程度でこんなに多くのヒビが発生するものなのか?色の変色が発生するのか?というもの、ヒビに関しては「コロニアルNEO」は多くの苦情を聞いていましたが、色の変色についてはこの場合、初めから違った色の材料か、ロッド、生産日時によって色の劣化が違うのでは?と思いました。色の変化、違いについては、とりあってもらえなかったそうです。
現在のKMEWの保証の条件としては、このようなヒビ、欠け、反りが10年以内に発生しても、それが雨漏りの原因となっていない場合は、保証の対象にはならいと思います。基本的には保証の条件から保証の物件とはなりません。また例え保証の対象になってもKMEWとしては、不具合箇所の材料を支給するのが基本で、その修理、取替の作業は基本的に有料になります。
メーカーは何をしてくれるのか?
もし、10年以内にスレート材の不具合の理由で雨漏りが発生した場合、保証になったときにKMEWは何をしてくれるか?というと、カタログの記載では;
室内への雨水の侵入:不具合が生じた損傷部分を限度として、不具合の発生していない部分と同程度の性能に修復させるものとし、次のいずれかの方法をもって対応する。
- 不具合の部分補修
- 代替製品の無償提供(※不具合が発生した部分の材料提供)
- その他最も適切と認められる方法による補修(KMEWが認める方法)
です。ときどきお客様は全部を葺き替えてたいと相談がありますが、気持ちは分かりますが、それはできないです。あくまでも不具合の部分だけの保証です。しかも基本的にはメーカーは不具合部分と同じ材料を提供するだけです。施工費用はお客様持ちです。交渉によって施工もする場合もありますが、材料の不良は施工業者の責任はありませんので、施工は有料になります。
2019年現在、スレート材を使うメリットがあまりありません
あまり手をかけたくない、メンテで苦労したくないなら、屋根材の耐用年数は重要で、10年程度で端が反ったり、ヒビが入ったり、割れたりする可能性のある材料は例え少し安くても、今、使うべきではないと考えます。あとのメンテで費用が大きく発生したり、面倒なことになったりするのです。
スレート材より確実に長く持つ、軽く、信用できる屋根材が現実にあるのですから、わざわざスレート材を使う必要はないと私は思っています。
KMEWのスレート材の耐用年数: 20年程度、KMEWのカタログには、塗装の耐候性についてはデータを表示していますが、スレート材そのものの耐候性データはありません。
一方ガルバリウム鋼板は、開発元のベツレヘムスチール社が、1974年から1999年の25年間、実際に材料を施工し、雨漏りがなかったと実験しています。よって、ガルバリウム鋼板の耐用年数は25年以上と言えるのです。
重量の比較:
KMEW;グラッサシリーズなどの最軽量な製品で、20Kg/㎡
ガルバリウム鋼板:5Kg/㎡
遥かにガルバリウム鋼板のほうが軽量です。
スレート材のまとめ
- スレート屋根にスレート材のカバー工法はできません。(メーカー保証がなくなります)
- スレート材をリフォームで使うといろいろな施工条件をクリアする必要があります
- ガルバリウム鋼板はスレート材より1/4の重量で屋根材では最軽量です。
- スレート材の耐用年数は20年ですが、10年程度で端が反ったり、ヒビが発生したり、欠けたりするリスクがあります。
・以上の理由から、リフォームでスレート材を施工するのはお薦めできません。
以上です。