将来の巨大地震に対応するガイドライン工法

瓦の耐震工法・ガイドライン工法/1995年以前の瓦工事は耐震ではない?

2022年1月より:ガイドライン工法の義務化(建設省告示第109号の改正)

「1995年以前の瓦屋根は瓦が屋根にしっかり固定されていません」

これをお客様に言うと一様に「嘘で しょう」「お前はそんなこと言って屋根葺き替えの仕事が欲しいのか」などの誹謗をうけたこともあります。しかし、実は私も瓦屋根の瓦は屋根にしっかりと釘やビスで固定されているのとばかり何の根拠もありませんでしたが、信じていました。

また屋根屋からは、言わないほうがよいのではないか。とアドバイスをしてくれた業者さんもいました。屋根屋、屋根業界は知られたくないことなのかもしれません。1995年以前、阪神淡路大震災前の瓦の葺き替え工法は引っ掛け桟工法で、瓦は桟木に引っ掛けて止めているだけでしたので、阪神淡路大震災や東日本大震災他の巨大地震で、沢山の瓦屋根が倒壊しました。これは瓦をただ置いただけの工法であったからです。棟のところに針金がありますがこの針金はただ積んだ熨斗瓦と冠瓦をくくってあるだけで、屋根本体には固定されていません。下の写真を見てください。

瓦の棟部分の破損、熨斗瓦、冠瓦は簡単にずれたり、落下します

先の東北日本大震災で被災した千葉県内の瓦屋根の様子。下左は棟部分で災害にあったままの状態で何もしていない棟部分が崩れている様子。下右は棟の瓦(熨斗瓦と冠瓦)を撤去した後の写真です。棟部分は、土を乗せてその上に熨斗瓦、この場合は二段のように思いますが、乗せて一番上に冠瓦を乗せているだけで、熨斗瓦+冠瓦を針金でくくっているだけです。屋根本体と熨斗+冠瓦は固定されていません。

なので簡単に棟部分はずれてしまいました。良く針金で固定しているのでは?と聞いてこられるお客様がいますが、針金は屋根本体との固定用ではなく、熨斗瓦と冠瓦をくくっている針金です。ですので屋根本体とは固定されていません。右の写真を見れば良く分かると思います。このように古い瓦の施工方法は簡単に棟瓦を「土」で固定し、釘、ビスの類は使っていないのです。

瓦棟部分の地震による破壊

平瓦(本体の瓦)は、桟木という枕の角材に引っ掛けているだけ

平瓦、本体の瓦は、別の写真を使いますが、上の写真のように、赤丸の部分に釘、ビスの固定した跡がありません。また瓦に固定用の穴もありません。元々穴など無いのです。どうやって屋根本体と固定しているか、と言うと、赤丸部分の下に、写真ではわかり難いですが、瓦に爪があって、桟木という角材に引っ掛けて止めています。ですので、引っ掛け桟工法と言うわけです。

雨漏りでの瓦の剥がしたところ

瓦の固定に使われる桟木とは?

桟木の様子、瓦を剥がしたところ

また別の瓦工事の現場写真ですが、瓦をすべて剥がしたところです。横方向に15mm程度の角材があります。これらを桟木、または桟と言います。ここに瓦の爪を引っ掛けて瓦一枚一枚屋根に固定していました。余談ですが、ところどころにある瓦の破片はこの屋根を施工した屋根屋がゴミとして瓦の下に置いていったものです。ゴミを持ち帰らず、瓦の下に放置です。屋根はゴミ箱になっていました。

ガイドライン工法の威力/巨大地震に対してどのくらい丈夫か

ガイドライン工法は乱暴な言い方をすれば、ただ瓦を釘で止めるだけです。これで巨大地震に耐えられるのか?少し疑問でした。しかし、次の実験(Youtube)の結果をみればその疑問は無くなります。下の写真は木造家屋の耐震の実験です。

耐震の対策をしなかった家は一階部分は完全につぶれてしまい、対策をした家は、壁が少し剥がれていますが大きな被害は無く無事でした。(でも事故の判定は全壊かもしれません)また瓦を良く見て欲しいのですが、倒壊した瓦もしなかった瓦も無傷で屋根にきちんと残っています。

両方ガイドライン工法での瓦の施工なのですが、阪神淡路級の巨大地震でもガイドライン工法の屋根は棟さえ崩れません。その証明です。

ガイドライン工法

阪神淡路大震災、震度7でも崩れないガイドライン工法

耐震実験

阪神淡路大震災、JR鎌取駅付近の地震計で観測されたデータを元に大規模に再現した実験。この実験は家の耐震対策を施した家と施していない家との違いを実験したものですが、屋根屋が注目するのは、両方とも瓦の施工方法は、ガイドライン工法であるということ、A棟は一階の柱から倒壊が始まって全体が崩れていますが、屋根に注目してもらうと、A棟もB棟も瓦が落ちた形跡がありません。

倒壊したA棟でも屋根の形は残っていて、瓦も無事です。この実験では耐震補強の効果、違いのものですが、屋根に関してはガイドライン工法がどれほど巨大地震に耐えられるか?の実験もしていると思っています。少なくともこの実験から、瓦のガイドライン工法は巨大地震、震度7に対しては大丈夫ということが証明されたものです。

倒壊する家としない家の違いは何なのか?計算できます

その家屋が巨大地震で倒壊するかしなのか?耐震診断法によって計算できます。耐震対策をどこをどう補強すれば倒壊しないようになるのか?をアドバイスした本があります。建設省の外郭団体、民間、大学関係の研究者が作った「木造住宅の耐震診断と補強方法」があります。

これによると、巨大地震の力を必要耐力、その家が倒れまいとする力を保有耐力とし、保有耐力が必要耐力より大きいとその家は理論上倒壊しないことになります。それでも実際の巨大地震はどのようにゆれるのか、分からないため耐震の評価値で表されます。

・・・ 詳しくは屋根の耐震診断を読んでください。

ガイドライン工法とはどんな工事方法か

ガイドライン工法とは、釘で一枚一枚止めるとはどの様な工事をするか、下の写真のように釘で桟木に固定します。また棟部分も冠瓦を固定する為に金具を取り付けます。このようにして瓦、棟の瓦を屋根本体に固定します。

瓦のガイドライン工法

ガイドライン工法棟部

ガイドライン工法 棟部分2

ガイドライン工法は公の組織が作ったもの

ガイドライン工法、耐震工法は通称で、独立行政法人 建築研究所が監修し、社団法人 全日本瓦工事業連盟、全国陶器瓦工業組合連合会、全国厚形スレート組合連合会が発行したもので、その表紙の表題は、「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」となっています。

初版は、平成13年8月13日(2001年8月)阪神淡路大震災のあった1995年1月の6年後の初版発行です。この冊子(145ページの本)はPDFで誰でも見ることができます。「ガイドライン工法」で検索すれば簡単に当該のサイト、全瓦連のサイトが上位にあります。

1995年前にも瓦の工事に関しいろいろな瓦の固定方法があったのですが、全国レベル、政府関係機関、瓦の全国組織がやった対策はこれが初めてのようです。また従来の瓦の基本工法を地震や強風に対して脆弱な工法であったことを認めています。そのために開発された工法であると。

しかし、いろいろな工法の改良はなされているといっても、瓦の引っ掛け桟工法は、古く江戸時代に考案されたものであり、それ以来巨大地震は幾度となく発生しています。それが21世紀になってからようやく耐震、耐風圧に関する標準工法がやっと出来たと思うのは私だけでしょうか?

瓦屋根の業界は保守的で、今までのやり方を変更することにかなりの反発があったと想像します。特に施工費用の面で屋根屋さんは瓦を一枚一枚釘で固定するやり方は工数を増やすことになり職人の経費がかかります。瓦工事の仕事が減少し、価格競争の激しい時代にあって、工数を減らし、経費を減らして儲けを大きくする為に、まだまだこれをお客様から言われなければやらない瓦屋さんもいるという現実があります。何も知らないで黙っていると、引っ掛け工法をやらない屋根屋が存在します。工事が完了した後でクレームを言っても契約にない、見積段階で言われなかったなどと逃げれられてしまいます。

私の家の屋根も2008年にリフォームしましたが古い工法です

何を隠そう、私の今住んでいる家は瓦屋根ですが、2008年に大規模にリフォームを行ないました。ガイドライン工法が発行されてから7年も経っています。それでも瓦の施工は、引っ掛け桟工法でした。瓦をそのまま使って欲しいと言ったための工法だったのかもしれませんが、私はそのときガイドライン工法などは知りませんでした。しかし、阪神淡路大震災は大阪で経験しておりその恐ろしさは実体験しています。

一言くらいガイドライン工法のお薦めがあっても良かったのでは?と恨み節です。瓦の葺き替えの費用は見積から80平米程度で200万円、充分に瓦を新しいガイドライン工法用のものに変更できる費用です。これは今なら自分で工事費用を計算できますので、価格もかなり高いですし、ガイドライン工法ではないのです。

今でも(これを書いているのは2018年6月)ガイドライン工法を採用すると通常の施工価格より高くする屋根屋がいます。標準工法と言いながらいまだ経費、儲けの問題で、お客様が問題にしないとこの工法を採用しない屋根屋がいるのです。

お客様がガイドライン工法をしり、それを採用するように確認する

残念なことと思います。全ての瓦屋が全ての瓦工事でガイドライン工法を採用するとは限らないのです。ですから消費者がお勉強をしないで屋根屋の言いなりになっていると、問題が起こりますと言っているのはこういうことです。知らないとお客様が損をする、ある種大変困った事態になってしまうのです。

瓦の屋根葺き替えには、見積時にガイドライン工法、耐震工法でやってくださいと確認して見積を取ってください。何も指定しないと、古い、安い工法での見積かもしれませんので。

多分お客様はガイドライン工法が何のか?そもそも瓦の工事ってどのような工事なのか?知らない方が多いと思います。今は屋根屋に全てを任す時代ではありません。面倒ですが基本の事柄を知らないと結局損をするのはお客様です。

契約時にガイドライン工法の話しをしないで、一度引っ掛け桟工法で工事が完了したら、多分裁判で工事のやり直しを訴えてもお客様は勝てないと思います。今は大抵の瓦屋さんはガイドライン工法での工事ですが、でも屋根屋の公告だけ見てもこのようにプチ悪徳の業者かどうか判断できないのが現状です。業者は何をするのか?その屋根屋の公告、営業を見ても分からない時代になっています。見積をとっただけでは分からないのです。

お助け隊は10年屋根屋を見てきました。競合会社も同じように見てきて、このようなことを述べています。工事の専門性も重要ですが、いろいろな事象をアドバイスできるのは屋根工事お助け隊ならではです。いろいろ質問をしてください。またはお客様の知らないこともお知らせできます。普通の屋根屋はあまり言わない、言いたくないこともアドバイスします。

そして適切な提携屋根屋をご紹介します。絶対ではありませんが、屋根屋を一社、一社聞いてもどの屋根屋が良いのか分からないと思いますので、誰かが良い屋根屋と良くない屋根屋を評価しないといけない時代になっています。難しいですが。

ガイドライン工法で施工しない屋根屋さん(繰り返し)

気を付けて欲しいのは、安かろう悪かろうのことです。成るべく安く瓦の葺き替え、葺き直し工事をやりたいのは分かります。わかりますが、無理に値引きをしたら、そしてこのガイドライン工法を知らなくて見積にも出てこないし、契約時にもガイドライン工法など一切話しに無っかたら、値引きの結果として引っ掛け桟工法で施工されても、文句が言えません。

何故ならガイドライン工法は義務でも、建築法で定められたものでもないからです。ガイドライン工法は単なる瓦の全国組織である全瓦連と国土交通省がただ「推奨」「標準」としているだけです。

ですから、あなたがガイドライン工法を知らないで、相見積で一番安い瓦屋に発注しても必ずガイドライン工法をしてくれる保証はどこにもないのです。対策はただ一つ、見積段階でガイドライン工法を知り、ガイドライン工法での見積で比較することです。

信用の置ける、「長年付き合った屋根屋だから信用できる」時代はすでに終わったのです。自分で調べて、勉強してガイドライン工法を知り(インターネット上に沢山出てきます)、屋根のことを詳しく知る必要はありませんが肝心のことは知らないと屋根屋に良いようにされてしまいます。

建築関係は総じてこのことが言えて、業者まかせの時代は既に終わっています。良い工事、良い屋根葺き替え工事は自ら学習して手にできるものと強く思います。その為にこのサイトを一生懸命に書いています。

ガイドライン工法工事費用は全瓦連の標準価格より安い瓦屋さん

瓦の施工相場価格は、統一的なものは無いかもしれないというのが私の思いですが、全瓦連の標準価格よりかなり低価格の地域、提携屋根屋さんがあります。茨城県担当の屋根屋さんです。その瓦の施工価格は、ガイドライン工法での瓦の施工で;

・銀黒(ぎんぐろ瓦)の工事価格 ¥4,200/㎡
・日本瓦(和瓦J型)の工事価格 ¥4,200/㎡
・平板瓦の工事価格 ¥4,600/㎡
・陶器瓦(黒色)工事価格  ¥4,600/㎡
・陶器瓦(釉薬瓦黒以外)の工事価格 ¥4,700/㎡
・スペイン風瓦(素焼き瓦S型)工事価格 ¥4,800/㎡

ガイドライン、耐震工法を採用しての本体施工価格(瓦の材料費と施工費で)

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以上です。

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