アスファルトシングルでのカバー工法/工事費用
カバー工法は、既存の屋根材、例えばスレート材を撤去せず、その上からルーフィング、軽量な屋根材を被せる工法です。アスファルトシングルでもスレート屋根のカバー工法が可能です。この場合は自着式のルーフィングがお薦めです。下写真を参考にしてください。
①:既存のスレート材です。②:自着式のルーフィングですが釘、タッカーを使いません。スレートにルーフィングを貼る場合は、タッカーを使えませんので、少し太い釘になりますが、釘を使用しない分自着式のルーフィングの方が面で接着して雨漏りのリスクをかなり軽減できます。 ③:ルーフィングの上にシングルを施工している写真。④:棟部分を残して施工が完了するところです。
完成の写真:
このカバー工法は少し特殊で、施工の順番は他のカバー工法と同じですが、自着式のルーフィングと接着剤を使うシングルの施工方法はその固定方式が違います。写真からは分かり難いですが、釘の打つ本数がかなり少ないです。
自着式のルーフィングは、カバー工法では徐々に普及しています。アスファルトシングルは価格も多少低く工事日程も短くて済みます。
カバー工法でコスト削減/既存の材料を撤去せず
屋根を葺き替えるときは、既存の仕上材(屋根材)を撤去&廃材の処理、下地材が傷んでいる場合は交換、一部分の交換、修理をしてから、ルーフィング、新しい仕上材の施工と工事は進みます。
しかし、既存の屋根材の撤去とその廃材の廃棄には、多大の労力と費用がかかります。例えばコロニアル・スレートの撤去費用は、70㎡の屋根ですと、撤去費用は、¥100,000~¥130,000、廃材の処理には¥100,000~¥140,000もの費用が必要です。屋根全体の葺き替え費用が100万円程度とすると、撤去と廃材で20万円~30万円かかり、決して小さな金額ではありません。
このため、主に費用の面の理由で既存の仕上材を撤去せず、既存の仕上材の上にルーフィングと新しい仕上材を施工する方法「カバー工法」「重ね葺き工法」の契約が多いわけです。
カバー工法が可能な屋根
カバー工法ができる既存の屋根は;
- コロニアル、カラーベスト、スレート屋根
- トタン、瓦棒の屋根
- アスファルトシングル(シングル)屋根
瓦、和瓦、洋瓦の屋根にはカバー工法は使えません。瓦を撤去しての普通の工法になります。一般木造住宅の屋根はおおよそこれらの屋根材を使っていることが殆どで、カバー工法に使える新しい屋根材は軽量な材料が選ばれます。次のような仕上材(屋根材)です。
アスファルトシングルでカバー工法を実施するには、スレートとアスファルトシングルの場合が可能です。瓦棒は、勾配が緩いことが多いので、あまり実施されません。コンパネを瓦棒の上に一度施工するカバー工法の場合は、勾配が2寸以上であれば、可能です。
シングルでのカバー工法のメリット、デメリット
カバー工法のメリット
- 既存の屋根材を撤去する費用、廃材を処理する費用が不要
- 撤去工法より工事期間が短くなる。
- 新たな仕上材を既存の材料に重ねることで、夏の暑さは、今より悪化しない
- 雨音は多少小さくなることが予想される。シングル材では雨音は小さいです。これはシングルの特徴で、表面に細かな石粒(砂)がコーティングしてあり雨粒を拡散し、雨音をかなり軽減します。
カバー工法のメリット、懸念事項
ここに上げるカバー工法の懸念事項は、その対策も含めたものです。その対策が納得できないものや不十分と思われたとき、どうするか?更に詳しい話が聞きたいときは、お助け隊の小形(0120-58-1152)までお電話ください:できるだけ詳しくお答えいたします。
施工費用が節約できるカバー工法ですが、懸念事項がないわけではありません。デメリットもあります。主にガルバリウム鋼板でカバーする際の懸念事項を参照して貰いましょう。参考になると思います。
ガルバリウム鋼板でカバーする際の懸念事項、デメリット:
- スレート屋根の上にルーフィングを施工するのに問題
- 下地が劣化している状態でスレートの上にカバー工法をやるのが問題
- カバー工法をしてある屋根に更にカバー工法は不可
- 雨漏りに気付くのが遅れる可能性がある
- カバー工法は太陽光パネルの設置ができない
- 選択できる屋根材が限られる
- 部分修理が困難(嵌合式のみ)
- この先20年、30年も下の材料がもつのか?
- 古い屋根材、苔、カビなどそのまま残すので、心理的に気持ちが悪い
- 火災保険が使えなくなる可能性がある
a~j の懸念事項:
a. スレートが既存材料の場合は、スレートに上に直接ルーフィングを施工します。このルーフィングは通常アスファルトルーフィングを使用しますが、このルーフィングについての懸念事項です、アスファルトシングルでも同様の懸念があります。
b. 下地が劣化している場合もやはり心配、もしくはカバー工法が不可のときもあります。
c. 2回目のカバー工法の場合です。一度カバー工法があって更に同じ工法が出来るか?の問題です。
d. カバー工法を実施した場合、雨漏りに気づくのが遅くなるのか?の懸念です。これもスレートの場合と同じ懸念があります。
e. 太陽光の懸念です。※太陽光パネルの取り付けは、コーキングで隙間を埋める方法でビス止ですが、コーキングは、剥がれやすく、雨漏りの原因になります。金具自体も錆びますので、お助け隊ではお薦めできません。
f. カバー工法に使える屋根材は、限られています。このページでは、アスファルトシングルでのカバー工法、特にスレートの上にアスファルトシングルの施工を考えていますので、一応は可能です。
g. カバー工法を実施した場合、万が一本体の部分から雨漏りが発生し、そこを修理となると、比較的容易に剥がれると思いますが、ルーフィングにも接着していますので、一緒に剥がれてしまいます。なので修理の範囲は少し広くなってしまう可能性があります。
h. 下地材の耐用年数について。アスファルトシングルでも下地の話は同じです。
i. 既存の古い屋根材も同じようにのこります。
元々アスファルトシングルは、海外のやり方での施工は、お助け隊のお薦めではありませんが、接着剤をリッチに塗布すれば、カバー工法も可能です。しかし、ルーフィングには良く考えて施工するべきと思います。
シングルのカバー工法が使える既存屋根とその価格
既存の屋根材がスレート材、シングル材の場合は、その上からルーフィングを施工後、シングル材で重ね葺きをすることができます。トタン、瓦棒葺きは直接はだめで、一旦下地材・コンパネを施工してからルーフィング+シングル材の施工になります。(一応これもカバー工法です、且つ通気工法になります)
注意:
アスファルトシングルを施工する際の必要勾配は、3.0寸以上で、自着式のルーフィングを使用した場合は、2.0寸から施工が可能です。
・・・旭ファイバーグラスHP、施工について「屋根勾配は何寸から使用可能ですか?」の項目参照
URL:https://www.afgc.co.jp/product/roofing_material/faq.html#faq02
施工価格概算を計算するために下のサンプル家屋を考えます。シングル材の重ね葺きはルーフィング+シングル材料、本体以外の施工になります。関連する雪止め、雨樋の工事は含まれません。

建坪:18.6坪(61.8㎡)、二階建て、5LDK
既存屋根材:スレート材、トタン・瓦棒
屋根形式:切り妻型 勾配:4.0寸
既存の屋根材がスレート材、シングル材の場合は、シングルのカバー工法が可能です。この場合は同じ工法、同じ材料での工事になります。下記のようです。
シングルによるスレート屋根カバー工法費用概算
工事項目 | 金額・費用 | 単価 | 単位 | 数量 | |
---|---|---|---|---|---|
内訳: | - | - | - | - | |
ルーフィング施工費用 | ¥ 103,200 | ¥1,200 | ㎡ | 86 | 自着式のルーフィング |
アスファルトシングル本体施工費用 | ¥ 473,000 | ¥5,500 | ㎡ | 86 | 材料込 |
本体以外の屋根部品施工費用 | ¥ 60,000 | - | - | - | 材料込 |
仮設足場設置&撤去費用 | ¥172,000 | ¥800 | ㎡ | 215 | |
工事費用小計 | ¥ 808,200 | - | - | - | |
諸経費(工事費の5%) | ¥ 40,410 | - | - | - | |
税抜き工事計 | ¥ 848,610 | - | - | - | |
税込み合計 概算の為 千円未満四捨五入 | ¥ 933,000 | ||||
===============
シングルの耐用年数は、おおよそ20年、それから考えると、高耐候性のルーフィングをしてももったいないと考えました。それよりはスレート材のカバー工法ですので、接着が面で固定し、タッカーで固定するルーフィングより自着式のルーフィングのほうが安心ですので、今回は自着式のルーフィングでの概算です。
自着式のルーフィングは、各社から出ていますが、このページでは、田島ルーフィングの自着式での概算です。自着式の価格は、¥1,200/平米としました。
トタン屋根の上から下地を追加し、シングルでのカバー工法工事概算です
このサンプルでは、勾配が4寸ですので、シングルの施工が可能です。シングルが施工できる勾配は、通常3寸以上、自着式のルーフィングを使った場合は、2.0寸以上あれば可能です。
この工法は、結果的に通気工法になります。トタンの場合よりシングルの素材の為と通気工法の理由から雨音は殆ど無くなります。
葺き替え項目 | 金額・費用 | 単価 | 単位 | 数量 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
内訳: | - | - | - | - | |
コンパネを施工 (二枚目) | ¥172,000 | ¥2,000 | ㎡ | 86 | |
ルーフィング施工費 | ¥103,200 | ¥1,200 | ㎡ | 86 | 自着式ルーフィング |
アスファルトシングル本体施工費用 | ¥ 473,00 | ¥5,500 | ㎡ | 86 | 材料込 |
本体以外の屋根部品施工費用 | ¥ 60,000 | 一式 | - | - | 材料込 |
足場設置&解体費用 | ¥172,000 | ¥800 | ㎡ | 215 | |
屋根工事の小計 | ¥ 980,200 | - | - | - | |
諸経費(工事費の5%) | ¥ 49.010 | - | - | - | |
税抜き工事計 | ¥ 1,029,210 | - | - | - | |
税込工事合計 概算の為、 千円未満四捨五入 | ¥ 1,132,000 |
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注意:
トタン屋根、瓦棒からシングルへの変更(この場合はカバー工法)をするには、勾配を考慮しなければなりません。シングル材料は勾配が3.0寸以上ないと雨水が滞留し易く(雨仕舞いが悪いと言います)、雨漏りの遠因になるので、トタン屋根の勾配が緩やかな場合(3.0寸以下)の場合は同じ瓦棒にするか「縦ハゼ」にするしかありません。ここでは屋根勾配が4.0寸あるので、そのままシングルの施工が可能です。
アスファルトシングル屋根材の製造及び販売会社、輸入販売会社
米国では非常に一般的な屋根材ですが、日本では規格の問題があって上陸、紹介された歴史が浅くあまり知られていません。よって販売会社、製造会社も多くありません。主なメーカー、輸入販売会社を掲載します。
- オーエンス コーニングジャパン社/製品:オークリッジ
- 田島ルーフィング社/三星シングル
- 旭ファイバーグラス社/リッジウェイ
- 株式会社ニチハ/アルマ
この中で、実際にシングル製品を製造しているのは、オーエンス コーニングと田島ルーフィング社の2社、旭ファイバーグラスとニチハは他社製品のOEM販売(他社の製品を自社の製品として販売すること)
カバー工法についてのまとめ
アスファルトシングルの施工にはシングルセメントの塗り方に注意が必要で、またシングルでのカバー工法が可能な既存屋根は限定があり、カバーする方の材料にもできるものとできないものとがあります。
カバー工法は、デメリットよりメリットの方が多く、費用の違いは大きいです。致命的なデメリットなく、一部のサイト、業者はカバー工法を耐震に弱いとして撤去を薦めますが、その根拠、具体的なデータを言おうとしないことが多いです。多分具体的な計算ができないか、その方法、耐震診断の方法を知らないのだと思います。(耐震は元々屋根屋さんのしごとではないと思いますが・・・)
参考サイト、書籍、マニュアル、雑誌
・旭ファイバーグラス、ホームページ:施工についてのページ、屋根勾配についての項目https://www.afgc.co.jp/product/roofing_material/faq.html#faq02
・株式会社 屋根技術研究所;youtube動画:太陽光発電システム 施工マニュアル編https://www.youtube.com/watch?v=KxrPsHW4H0I
以上です。