アスファルトルーフィング

ルーフィング・防水材の劣化の仕組み、長耐用年数ルーフィング

ルーフィング劣化の原因

ルーフィングの劣化の仕組みと長持ちの秘密

ルーフィングの防水は、主にシート層の内、アスファルトを含有している層が機能しているからです。このアスファルト防水層の劣化とは、アスファルト自身が劣化により固くなり、柔軟性、粘性が失われることです。

この水を通さないアスファルトですが、柔軟性、粘性があるうちは、打たれたタッカーの針を包み込漏洩の防止になっています。また、何かの力が非対称、歪にかかりルーフィングが破れる、裂けるなどの防止になっています。ルーフィングシートの柔軟性、粘性の為せることです。

しかし、劣化しアスファルトが固くなると、漏水しないよう釘、針をうまく包み込むことが出来なくなったり、シートの少しのズレにも対応出来いなくなって裂けたりします。

これがルーフィングの劣化による雨漏りの発生原因です。

ルーフィングの劣化の様子画像

ルーフィングの劣化、正確にはアスファルト防水層の劣化は、紫外線、酸化と熱による劣化(熱劣化)です。特に熱の影響で劣化が促進されることが分かっています。そして寿命の性能を測定することがでます。促進性能試験でおおよその劣化の速度(10年単位程度)がわかります。雨漏りでの劣化はアスファルトの硬化で評価されます。

ルーフィングの規格、試験、釘穴シーリング試験

 ルーフィング製品の殆どはJIS規格か、業界団体規格ARK規格品です。これは何を規定しているのか?と言うと、ルーフィングの寸法精度、重さ、折り曲げ性、引張強度、漏水性能などの性能を試験し、合格品が世にでています。この中で耐用年数に特に注目したいのが、漏水性能、釘穴シーリング性能で、試験の方法としては、円柱をルーフィングの上に置き釘やタッカーを打ってそこからの漏水がどれだけあるかをテストします。(下図)

釘穴シールドテスト画像

 塩ビの筒に加圧の為に水を入れて、ルーフィングとの間を塞ぎ、釘、タッカーを打って、その穴から水が漏れるか?をテストします。業界規格のARK04では、生産されたばかりのものを使うので、経年劣化の試験ではありません。この検体を促進試験といって、20年分、30年分の温度変化、雨、空気に晒すなどの負荷をかけ、その後この釘穴シーリング性能試験をやって、漏れがなければ、このルーフィングは30年相当の耐用年数があると言っています。

 環境の変化を30年分、50年分と与えているといっても擬似的な負荷なので保証値ではなく、あくまでも実験結果です。それでもこの実験、テストには費用がかかるので、製品全てをやるわけではありません。この耐用年数を延ばす為にメーカーは色々素材の研究をしています。

ルーフィングの素材、構成/長期の耐用年数が可能な訳

一般的なゴムアスの素材と構成:正式名称:改質アスファルトルーィング

ゴムアス成分構成

 通称ゴムアスと言われている改質アスファルト・ルーフィングは上記の図のように、アスファルトとその他の材料で層をなし、頑丈で長寿命の防水材を構成しています。おおよそ20年~30年はもつといわれているゴムアスは主にアスファルトの成分で防水材をしており、このアスファルトの劣化が耐用年数に大きく関係しています。

アスファルトは主に熱と酸化によって劣化が進むと考えられていて、経年劣化でアスファルトが固くなる、硬化することで釘、ビス、タッカーによる穴のシーリングが劣化しやがて漏水に至ります。アスファルトの硬化をいかに遅延させるかが鍵になっています。各社このアスファルトに何を混合すればより硬化の遅延をさせられるか?が鍵になっています。

カタログに耐用年数が30年と書かれたNEWライナールーフィングの構成

 アスファルトに何を混合すれば良いのか?その内容は企業秘密ですが、NEWライナールーフィングは、30年以上の実績があって、30年経過したルーフィングのアスファルト残存量を調べたところ、普通のゴムアスと同じ量が残存していたと田島ルーフィングの営業は言っていました。こんなことから耐用年数30年と自信があるので、カタログに記載していると思われます。

NEWライナールーフィング成分構成

マスタールーフィングの成分層の構成

 マスタールーフィングの耐用年数は60年とカタログに記載があり、その成分層の構成は下記のようになっています。注目なのは劣化防止層が、2層の改質アスファルト層の外側にあることです。多分酸化からの保護と考えれられますが、この劣化防止層は蒸着という半導体の生産技術を使っていて、長持ちする要です。

マスタールーフィング成分構成

 マスタールーフィングの内部層は、アスファルトを含有した不織布(ふしょくふ)を両側からアスファルト層、劣化防止層でサンドしています。この劣化防止層がみそで、これは半導体を製造するときの技術である蒸着を用いているそうです。アスファルトを硬化、劣化させる熱と酸化をこの劣化防止層で保護しています。しかもそれが2セットあります。これで60年という長期に渡ってアスファルトを守っています。

 60年と言う数字は、瓦の耐用年数が60年と言われていますので、瓦屋根の耐用年数に合致します。参考までに、60年の経年劣化負荷をかけて他のルーフィングと比較したものの結果を記しておきます。これも60年の根拠と思われます。

防水性能とルーフィングの柔軟性の関係/耐用年数との関係

マスタールーフィング耐用年数実験

 青いグラフがマスタールーフィング、赤が普通のゴムアス(改質ゴムアスファルトルーィング、ARK04規格相当品)、黄色が1世代前のルーフィング(古いJIS規格合格品)横軸は経過年数、縦軸はルーフィングの柔軟性。柔軟性の劣化が耐用年数に相関があり、上の漏水試験で釘から水が漏れるのは、アスファルト成分が柔らかいうちは、釘をしっかりと密着し漏水を防いでいますが、アスファルト成分やその他のものが固くなり釘との間を埋めることが出来なくなったとき、漏水が始まると考えられます。

どの時点で漏水が始まるかは、黒矢印のあたりで、これ以上硬化すると穴が大きくなり漏水が始まるととされています。これを鑑みると、一般のゴムアスは約20年で漏水が始まってもおかしくなく、マスタールーフィングは60年以上の耐用年数があると言えます。黄色のルーフィングは、悪く考えると施工した直後から漏水が始まるかもしれません。今はこの940というルーフィングは殆ど使われませんが・・・(これを知らない業者は使うかも??)

マスタールーフィングは60年間施工された実績はまだありませんが、田島ルーフィングではカタログに耐用年数60年と書けるのはこの結果があるからではないかと考えます。勿論NEWライナールーフィングの実績もあり自信があるからです。

促進劣化を与えた後の柔軟性劣化試験/耐用年数の規定のやり方

 JIS規格も業界団体のARK04規格も試験をするルーフィングは生産されたばかりのものを使って実施します。20年、30年と経年変化をしたものではありません。耐用年数を規定するのは、劣化の期間を相当する負荷で与えてから、同じ試験をしないと耐用年数の評価にはならいのです。

 アスファルトルーフィングの劣化は主にアスファルトの酸化・熱劣化ですので、50年間の劣化に匹敵する負荷を与えます。加熱処理条件(劣化の期間条件)は、90℃の恒温槽で26週間(半年間)、80℃の恒温槽で52週間(1年間)(真空状態ではないので、酸化が進む)入れっぱなしにして、その後検体を取り出して、同じ漏水試験を行って合格なら、その検体は(保証値ではありませんが)50年の耐用年数があると言っています。

 具体的に、マスタールーフィングも同じことを社内的に実施していますが、その試験の条件、実験結果の具体的な数字は公表されていません。グラフのみが公表されています。

 

まとめ

 アスファルトルーィングの劣化は主に熱による劣化で、その耐用年数の測定には、劣化を擬似的に促進した条件を与えて、その後同じ漏水試験を実施し、耐用年数を規定しています。

 

以上になります。

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