屋根の性能

断熱性能実験、ガルバリウム鋼板、スレート材、瓦(再試験)

断熱測定用Test Box 一度2017年夏にやった断熱性能試験をBOXの断熱性能を向上させて、再試験をしてみました。

屋根材の断熱性能は非常に良く聞かれる性能です。しかし、屋根材メーカーの断熱性能は身近で、直観的なデータではないです。屋根材の裏の温度を測ったり、シミュレーションの数字を載せたりしていますが、知りたいのは、自分の家の屋根を葺き替えたときに、部屋の中の温度がどうなるのか?ですよね。

ここでは、断熱性能の同じ実験用BOXを2つ作り実際の各屋根材を施工して、BOX中での温度を約半日間「横暖ルーフαS」との比較として測定しました。本当の家ではないのですが、参考になるのではないかと期待しています。測定した屋根材は次の通りです。

断熱材なし・ガルバリウム鋼板(Non SGL)

和瓦(釉薬瓦)

ガルバリウム鋼板・SGL・スーパーガルテクト (アイジー工業)

ガルバリウム鋼板・MFシルキー(福泉工業)

スレート(KMEW:コロニアルクワッド)

ガルバリウム鋼板・SGL・スマートメタル(KMEW)

アスファルトシングル(米国製)

石粒付鋼板・ディプロマット(ディートレーディング)

通気工法の断熱性能(屋根材はスーパーガルテクトを使用)

nongalva

ガルバリウム鋼板 断熱材の効果

各社の断熱材付のガルバリウム鋼板は、そんなに効果はありません。残念ですが、高々 1cm,(10mm)程度の断熱材では期待できる効果はありませんでした。

断熱材のないガルバリウム鋼板と断熱材のある横暖ルーフαSとの断熱性能比較の実験グラフです。使用した屋根材は「千代田鋼鉄のガルバリウム鋼板」とニチハの「横暖ルーフαS」になります。

断熱材なし&あり性能グラフ

測定は真夏の8月、朝6時から開始して夕方5時までの、気温と2つのBOX内の温度を電子温度計で測りグラフにしたものです。茶色:気温・外気温、青:横暖ルーフαS、赤:断熱材なしのガルバリウム鋼板です。

この日は14時頃最高気温になりその温度は35度を超えていて、かなり暑い日中でした。

もう少し顕著な違いが出ると思ったのですが、ほとんど温度差がありません。横暖ルーフαSは硬質ウレタンを10mm程度張ってあるのですが、断熱材がない千代田鋼鉄のガルバリウム鋼板とそんなに違いがないことがわかると思います。

ただ、2年前の同様な計測ではもう少し温度差がありましたが、体感できる差異ではなかったので、効果的な断熱材ではないことが理解できると思います。

和瓦 vs 横暖ルーフαSの断熱性能比較

瓦 vs 横暖ルーフαSの断熱性能比較

瓦 vs 横暖ルーフαS写真:

瓦のテストBOX

釉薬瓦の断熱性能測定、比較対象は横暖ルーフαS

瓦の断熱材としては、金属より少しは「まし」と思われています。特に瓦から軽量化の為に金属、ガルバリウム鋼板へ変更すると、夏の暑さを大変心配されます。その為の計測です。このグラフからは、瓦の断熱性能はそれほど、良くないと思います。2年前の計測では瓦の方が温度が高かったこともありました、環境が多少違ったと思っていますが、私はもっと瓦屋根の温度が下がると思っていました。

 あくまでも実験用断熱BOXでの測定で、気象条件、風、湿度などにもかなり影響されるので、実際の住宅で同じ結果が得られるとは限らないことを断っておきます。

瓦屋根が断熱性能を持つとしたら、瓦自体の断熱性ではなく、その工法と考えられます。下地と瓦の間には桟木という角材が枕として使われていますがこの隙間が2~3cmほどあり、これが空気の層を形成し風の通りが良いと部屋の温度上昇を緩和するのではないか?と考えられます。

瓦はお茶碗と同じ粘土の材料ですので、断熱性能はほとんどありません。屋根材としては横暖ルーフαSが厚さ10mm、瓦も15mm程度ですので両者とも断熱性能はそんなにはないと言えます。

 ですから、良く頂く心配:「瓦からガルバリウム鋼板へ屋根を葺き替えると断熱性能が著しく落ちる」は正しくないと考えられます。良くもなりませんが、瓦のときと比較しても大きく悪化することはないと思います。

スーパーガルテクト vs 横暖ルーフαS・断熱性能比較

断熱性能比較 スーパーガルテクト vs 横暖ルーフαS

ガルバリウム鋼板への葺き替えではどの製品が良いのか?教えてほしいという相談が多いです。で、SGLという最新のガルバリウム鋼板を使った屋根材、メジャーな横暖ルーフαSとスーパーガルテクトの断熱性能を比べてみました。

グラフを見てもわかるように、断熱性能に違いはありません。同じSGL、断熱材の厚さもほぼ同じなので、断熱性能は同じはずです。10mm程度では、あまり断熱性能を期待してはいけません。気温と同じように温度上昇が見られます。断熱性能がほぼない証拠になります。

 屋根材での断熱材はせいぜい10mm程度、因みに試験用のBOX自体の断熱性能をテストしたとき、屋根部分には、150mmの断熱材(スタイロフォーム)を入れているのですが、そのときの各BOX内の温度は次のようでした。

2つの実験BOX校正グラフ

見てほしいのは、BOXのグラフと気温のグラフの形とレベルです。気温のグラフに追随していると、BOX内の温度は外気の影響を受けている、熱の出入りがある、つまり断熱性能がない、または弱いということになります。理想は外気の熱を100%遮断することですから、BOX内の温度は一定になれば、理想です。

本当の断熱になります。どのグラフも気温に追随して温度が変化しています。この変化の度合いで断熱性能が良い、悪いと判断できるのです。

MFシルキー vs 横暖ルーフαS 断熱性能比較

 

MFシルキー vs 横暖ルーフαS断熱性能比較

MFシルキーは、断熱材の厚さは横暖ルーフαSとほぼ同じですが、この場合少し温度が高く記録されました。横暖ルーフαSやスーパーガルテクトと同じと思っていたのですが、そうなりませんでした。しかし、元々ガルバリウム鋼板の断熱材には断熱性能はあまりないので、断熱材のないガルバリウム鋼板とそんなに違いがあるのか?というと、この程度の差異ではその区別はできないと私は考えます。

スレート(KMEW) vs 横暖ルーフαS:断熱性能比較

KMEWスレート vs 横暖ルーフαS断熱性能比較

スレート(コロニアル、カラーベスト)もガルバリウム鋼板より断熱性能は僅かにおとります。ほぼ断熱性能はありません。スレートは鉱物繊維をセメントで固めた材料ですので、断熱材ではありません。スレートの上にガルバリウム鋼板を施工するカバー工法を良く契約して頂きますが、少しはましになると思っています。2017年のデータですが、提示しておきます。

断熱性能カバー工法vs横暖ルーフαS

 単体でのスーパーガルテクトとスレートの上に横暖ルーフαSを施工したものの比較グラフ

スマートメタル(KMEW) vs 横暖ルーフαS断熱性能比較

 

スマートメタル vs 横暖ルーフαS断熱性能比較

 

スマートメタル、は、KMEWの断熱材なしSGL・ガルバリウム鋼板です。これと、断熱材付のガルバリウム鋼板、横暖ルーフαSの比較です。断熱材なしでも横暖ルーフαSとほとんど同じ特性です。ちなみに温度差が一番大きいところでも、2度です。2度の違いが断熱性能の大きな違いとは言えないと思います。

 どちらも断熱性能はあまりありません。

アスファルトシングル vs 横暖ルーフαS断熱性能比較

シングル vs 横暖ルーフαS断熱性能比較

 

シングル、正式にはアスファルトシングル。これの断熱性能も同様に断熱性能はありません。

石粒付鋼板・ディプロマット vs 横暖ルーフαS断熱性能比較

石粒付鋼板・ディプロマット vs 横暖ルーフαS断熱性能比較

石粒付鋼板(ジンカリウム鋼板)。この日だけの特性かもしれませんが、横暖ルーフαSよりBOX内の温度は高い結果になりました。断熱性能は横暖ルーフαSと同様ないと思います。

 石粒付鋼板はガルバリウム鋼板の上に石粒をコーティングした材料で、細かい石粒の凸凹が太陽光線を拡散し温度が下がるとも思われていたのですが、そうならないです。このテスト環境、本日の気象条件では横暖ルーフαSよりBOX内の温度は高いままでした。

 

通気工法 vs 横暖ルーフαS断熱性能比較

スレートの上に通気工法、屋根材はスーパーガルテクト屋根と、横暖ルーフαSのみの屋根との比較グラフ:

上で測定してきたように、ガルバリウム鋼板、スレート、瓦、シングル等、一般の屋根材の断熱性能は、ほとんどないことがお分かり頂けたと思います。断熱材があったほうがほんの少しは温度が下がりますが、十分とは言えず、少し硬い断熱材を入れて材料の折り曲げを工夫することによって屋根材の強度を支えているように作っているのではないでしょうか?ことガルバリウム鋼板の10mm程度の断熱材では、「あったほうが良い程度」のものだということを覚えておいて頂きたいです。

 では、ガルバリウム鋼板や石粒付鋼板を施工するときに何か比較的安価で効果の高い断熱材はないのか?と聞かれたときに、お勧めするのが通気工法です。

 通気工法とは、下地材と屋根材との間に30mmほどの桟木を入れて空気層=断熱層を作るやり方で、軒先と棟を雨が侵入しないようにオープンにして空気を入れ替える、通気の仕組みを組み込みます。屋根材から暖気を効果的に逃がすことで、部屋の温度を下げることができます。昔からあるやり方で、知らない屋根屋さんもいるので、お客様から提案して依頼してもできない屋根屋はいないと思えるくらい簡単な工法です。

 下地の上に桟木を施工し、2枚目の下地材(コンパネ、合板)を施工したら、あとは普通に各屋根材を施工するだけです。特別な技術、材料は使用しません。価格的には、2枚目の下地材(¥2,000/㎡)+ 桟木(¥1,000/㎡)程度の費用です。夏の暑さ対策で最も費用対効果のある方法になります。

TestBox:

断熱性能比較・測定方法、測定の条件

全ての断熱性能比較試験をやった実験のBOXの解説です。

断熱性能測定BOX

断熱性能測定BOXと気温測定用BOX(簡易百葉箱)

本来は上記のテストBOXをテストする屋根材の数用意して、晴れた日に一斉に行うのが理想です。しかし、このBOXを作るのにもかなりの費用がかかりますので、2つ用意し、分かり易いように「横暖ルーフαS」との比較で実験を進めました。

 まずはBOX自体の断熱性能のキャリブレーションです。断熱材はスタイロフォーム50mmを使い、壁、床、屋根部分にそれぞれ150mm(50mmのスタイロフォームを3重重ね)を施工しました。この場合の2つのBOXの断熱性能は次のようでした。茶色のグラフが気温、赤と青のグラフがBOX内の温度変化になります。気温にあまり影響されず、28℃から32℃まで一定の温度で推移しています。かなりGOODな断熱性能と思います。2017に使用したBOXはもう少し温度変化があって、断熱性能が納得がいくほど良くありませんでした。今回はそのテストBOX自身の断熱性能を改良した実験になっています。2つの実験BOX校正グラフ

温度計:使用した電子温度計で、これをBOX内につるして、半日の間5分刻みで計測を値をメモリに蓄積して後、解析いたします。

連続記録電子温度計

 

まとめと考察

●瓦、スレート、ガルバリウム鋼板、シングルなど一般の「屋根材のみ」ではたとえ断熱材がついたものでも、十分な断熱効果は得られません。

●一般的な屋根材では断熱効果がさほどないことは、逆に言うと、瓦をガルバリウム鋼板へ変更しても、スレートをガルバリウム鋼板へ変更しても、夏、そんなに部屋が暑くなることはないことの証明で、心配することはありません。

●屋根の断熱を行うには、通気工法がコストパフォーマンスが良いです。

●屋根屋としては言いにくいですが、屋根だけでより良い断熱効果を得るのは困難と考えます。参考:断熱とはこんなことです。

 

 

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