問題点の考察8、9、10/部分修理が困難、下地材の耐用年数、気持ち悪い
ガルバリウム鋼板によるカバー工法の問題点は下の項目でここでは 8, 9, 10 についてです。
- スレート屋根の上にルーフィングを施工するのに問題、粘着シートをはるべき
- 下地が劣化している状態でスレートの上にカバー工法をやるのが問題
- カバー工法をしてある屋根に更にカバー工法は不可(カバー工法の3重施工)
- 雨漏りに気付くのが遅れる可能性がある。
- カバー工法は太陽光パネルの設置ができない
- 選択できる屋根材が限られる
- 部分修理が困難、嵌合式のみ
- 古い屋根材がそのままなので、この先20年、30年も下の材料がもつのか?
- 古い屋根材、苔、カビなどそのまま残すので、心理的に気持ちが悪い。汚いものには蓋というのが気に入らない。
- 火災保険が使えなくなる可能性がある。
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g.ガルバリウム鋼板の部分修理が困難
ガルバリウム鋼板屋根の修理は難しい、面倒。これは正しいと思います。しかし、ガルバリウム鋼板によるカバー工法だからではなく。ガルバリウム鋼板自体の修理が難しいのです。カバー工法だからではありません。スレート屋根をガルバリウム鋼板でカバーした場合、雨漏りの修理は、ガルバリウム鋼板及び下のルーフィングの修理になると思います。
ガルバリウム鋼板を外すのに手間がかかります。これを言っているのかと思いますが、カバー工法だからではなく、ガルバリウム鋼板屋根の雨漏り修理が面倒なのです。
何故か?
ガルバリウム鋼板は嵌合部がしっかり上隣の材料と嵌合(がっちり引掛け固定)されています。ということは、上の材料からビスを外して材料を一枚一枚剝がさないといけません。雨漏り部分や修理する部分が軒先に近い箇所だと、材料をかなりの枚数を撤去するのです。
途中で嵌合部分を外すことは、困難ですし、材料を曲げてしまいます。ガルバリウム鋼板の屋根材が一般化したのは、ここ10年程度と思いますが、ガルバリウム鋼板の本体での雨漏り修理が一般的に発生するのは、まだ少し先と思います。
スレート材料を交換、修理することはあるのか?考えてみましたが思いつきません。カバー工法後の雨漏りなら、ガルバリウム鋼板直下のルーフィングの張り替え、張り増しで対応できますが、その下のスレートや下地材を修理することがあり得るか?もし、スレートや下地に手をつけるとしたら、もうそれは全部撤去の時と思います。家の解体、屋根の解体、下地材からの屋根のやり直し工事です。
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h.古い下地がこの後20年、30年もつのか?
もつと思います。
下地がコンパネの場合、コンパネとは合板です。木材ですので、これの耐用年数を考えます。また合板とは薄いベニヤを張り合わせたものですので、併せて接着剤の耐用年数も考えます。
良く、下地材の耐用年数は20~30年と他のサイトにありますが、本当でしょうか?そこには何の根拠もなく、ただ印象で書いてある場合が多いです。
まず、木材の耐用年数:
木材の劣化の原因について、研究論文がありましたので参照します。
国土交通省、国土技術政策総合研究所、協同研究成果報告書:
「木造住宅の耐久性向上に関わる建物外皮の構造・仕様とその評価に関する研究」
第VI章 木造住宅の外皮木部の水分履歴に応じた腐朽危険度予測手法木材の生物劣化、腐朽の必須条件、水分制御の重要性
中略
腐朽は、微生物の酵素などによって木材細胞壁の主成分が分解され、その結果木材の細胞壁構造が崩壊する現象である。そのため木材の強度的性質に多大な影響を及ぼす点で最も重視すべき生物劣化である。腐朽を起こす微生物は主として担子菌の一群である。担子菌は図111に示す生活環を持ち、菌糸の状態で木材を分解代謝して自らの養分として取り込む。その結果として木材が腐朽することになる。
この論文では、木材が腐朽、劣化する主たる原因は、「担子菌」による木材細胞壁の主成分(セルロース等)を分解することによる。とあります。つまり微生物が木材を劣化させる。ではこの微生物が繁殖するには、どういう条件が必要かと言うと、4つ;
- 空気
- 栄養(微生物の食物)で木材中のセルロースなどの有機物
- 水
- 温度(適温)
この内どれかを与えなければ「担子菌」などの微生物は繁殖できないのです。しかし、空気は無くせません。不可能ではないですが、木材を真空状態に置かなければなりません。栄養は木材そのものですからこれを無くすことは、木材の耐用年数を調べるのですからできません。残るは「水」、水さえやらなければ、腐朽は防げるのです。ですから木材の劣化の原因、微生物(担子菌など)が木材の主成分を分解できなければ(繁殖がなければ)木材はそれこそ永遠に劣化しません。・・・つまり微生物を繁殖させない為にその条件の1つ、水を断てば木材は劣化しないのではないのでしょうか?そうこの論文は言っています。
私ごとですが、実家をリフォームしました。昭和41年の築です。壁を全て撤去したとき、柱や梁がでてきました。それを見たところ、新品とは言い過ぎですが、かなり綺麗な木材で大部分が全く問題なく修理なしで再利用できました。(シロアリにやられた箇所は交換しましたが・・・)
リフォームしたのは、2008年(平成20年)5月でしたので、そのとき築後42年です。42年経過してもかなり綺麗な状態で残っていたわけです。ただ合板の時代ではなかったので、それを見ることはできなかったのですが。
また、集成材の耐用年数について、こんな記事があります。
集成材の耐用年数;森林総合研究所 宮武敦https://xtech.nikkei.com/kn/atcl/bldcolumn/14/698129/101400011/?P=5
きちんと作られた集成材の寿命は50~70年以上は当然ある
森林総合研究所 複合材料研究領域 チーム長 宮武 敦氏中略:
まず「木材」の耐久性については、7世紀に建立された法隆寺をみなさんご存知のように、きちんと使えば1000年の耐久性があることが実証されているので、ここでは説明を省略する。
中略
現在のJAS規格で認められている接着剤を使い、基準を守って作った集成材であれば、一般的な使用環境なら50~70年は当然で、それ以上もつだろうということ。個人的には、耐久性の高い接着剤を使っていれば100年以上もつのではないかと考えている。
この宮武さんも木材自体の耐用年数は、1000年以上、集成材を貼り合わせる接着剤の耐用年数を鑑みても集成材の耐用年数は、20~30年ではなく、100年以上もつと思います。
i.古い屋根材、苔、カビなどそのまま残すので、心理的に気持ちが悪い。汚いものには蓋というのが気に入らない。
確かにスレートに付着した苔、カビを残して、上から新しい屋根材を施工するのは、気分的にあまり良いものではないと思います。理解します。解決策は簡単で、スレートを一度高圧洗浄すれば苔やカビはかなり落ちます。また、ワイヤーブラシ、ヤスリなどで落とすこともありと思います。もしカビ、苔が気になるようでしたら、スレートの洗浄、高圧洗浄をお薦めします。
また、カビは菌ですので、水分がなければ死にます。苔も水分と光合成を行うための太陽光線がないと死にます。そのままですと、死骸が残存しますが、繁殖は抑えられるはずです。これも気になるのでしたら、きれいに洗浄が良いです。
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カバー工法の修理が困難になる、下地材の耐用年数、苔、カビが残存については以上になります。