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・標準価格表を使っての面積別施工費用
50, 76, 81, 96, 140㎡
瓦の耐用年数は60年、その根拠は?
瓦の耐用年数を正確に記したものは多分ありません。しかし「CASBEE」に参考として瓦の耐用年数が書いてあります。瓦のメーカーもこの数字を使っていて、瓦の耐用年数は60年と言われています。
CASBEEとは何か?
CASBEE:Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency
の頭文字を取って「CASBEE」日本語では「建築物総合環境性能評価システム」と言います。国土交通省の支援を受けて産・学・官の共同で住宅の総合的な環境性能を評価するシステム、評価ツールです。一般の人がわりと手軽に、これから建てる住宅や今持っているもののリフォームなどを行うに際して住宅の環境を評価し、より良い家を作る目的でつくられました。このツールの中にCASBEE-戸建というものがあって、ここに瓦などの屋根材の耐用年数が書かれています。
CASBEE-戸建:
URL:http://www.ibec.or.jp/CASBEE/cas_home/cas_home.htm
この中からマニュアルをダウンロードして、マニュアルページ、P.51にその記載があります。それによると、各屋根材の耐用年数は:
・和瓦(洋瓦):60年
・カラー鋼板:15年
・フッ素樹脂鋼板:30年
・銅板:60年
・ステンレス板:50年
・塩化ビニル波板:10年
・アスファルトシングル:30年
和瓦と洋瓦が同じ60年となっていますが、目安と考えてください。正確な瓦の耐用年数は誰も言えないです。(他の屋根材もきちんと測定して規定したわけではありません)瓦のメーカーでさえこの数字を言っています。測定するのが難しいでしょうし、何をもって、どうなったときが耐用年数の終わりなのか?それさえ定義ができないと思います。
瓦にもその製造方法に種類があって、少しづつ耐用年数が違っています。おおよその数字です。
・釉薬瓦:陶器瓦:60年以上
・燻瓦:銀黒等:30年~50年程度
・素焼き瓦:40~50年程度
・セメント瓦:20年程度
瓦は粘土から作り、型で成形したものを釉薬を塗って高温で焼き上げた「釉薬瓦、陶器瓦」、松材や松葉で燻して、表面に炭化層をつくりる「いぶし瓦、燻瓦」。粘土そのものの風合いを残した素焼き瓦などがあります。セメント瓦は文字通りセメントを高圧で圧縮し、固めて作った瓦です。
陶器瓦は塗った釉薬が高温でガラス質になり強固な防水層を形成します。雨が内部に浸透して割れたり劣化することがなく、耐久性に優れています。いぶし瓦は表面を覆う炭素膜によって、防水や色彩を保っていますが炭素膜の劣化が瓦の寿命となります。陶器瓦が半永久的であると思われているのに対し(実際は60年より長いと思われています)いぶし瓦は少し短く40 ~50年ほどです。素焼き瓦は粘土をそのまま窯で焼きヨーロッパの瓦でよく見られ、耐久性はやはり40~50年です。
瓦の寿命が屋根の寿命ではありません
では瓦の寿命が60年として「屋根」の寿命は60年なのでしょうか?
「屋根の」寿命、耐用年数は2つの意味があると思います。屋根の機能として、1:家そのものであり、家の景観美観を形成する、2:雨漏りから家を守る機能、の2つです。
屋根は家の一部ですから美観、デザインの美しさは家の美観そのもの、家の美観が失われたら寿命です。瓦はその意味でかなり長期に劣化せず、釉薬瓦などは60年劣化しないことが予想されます。
しかし、2の「雨漏りから家を守る機能」は瓦だけで実現しているわけではありません。何故かと言うと雨漏りを”完全”に防いでいるのは瓦だけではなくルーフィングも機能しているからです。
ルーフィングは60年も持ちません。せいぜい20年程度なので60年の前に雨漏りが発生する可能性大です。雨漏りの修理があちこちで発生したらそれは屋根の「2」の機能の喪失です。しかし、瓦の寿命まではかなりの時間が残っていますので、この場合、瓦の寿命が終わったのではなく、ルーフィングの寿命で、ルーフィングの耐用年数の終わりなのです。
瓦はまだまだ使えるので、ルーフィングだけ交換する、所謂、瓦の「葺き直し」という作業があります。既存の瓦をそのまま使ってルーフィングを交換する 作業です。屋根の耐用年数は、2:の意味では、ルーフィングの耐用年数とほぼ同じと考えられます。故に「屋根の葺き替え」か「葺き直し」をしなければなりません。
ここでは、一般に「瓦」の耐用年数は、「屋根」の耐用年数より長い。・・・「2」の機能
また、瓦の美観が損なわれたら、屋根の美観も損なわれるので、「1」の機能では瓦の耐用年数と屋根の耐用年数は同じと考えられます。
どの屋根も同じですが、耐用年数の意味「1」と「2」を区別して考えてください。
瓦の種類別・耐用年数
瓦の種類は;
- 釉薬瓦:耐用年数 約60年と言われています。粘土に釉薬を塗って焼いた焼き物で一番寿命が長い瓦です。
- 素焼き瓦:粘土を成形してそのまま焼いた瓦です。耐用年数40年と言われています。
- 燻製瓦、燻瓦:銀黒の瓦がこれになります。燻すことで、表面に酸化の皮膜ができて表面が強固なものになり、美しさがでてきます。耐用年数40年
いずれの瓦でも、公共機関などが測定しこの耐用年数を確実に言っているところはありません。すべて屋根業界、関連団体、屋根屋などが言っているものです。瓦のメーカー自身も耐用年数の測定はしていなくて、あるメーカーは「CASBEE」に60年と書いてあるから、60年と言っている。と答えています。内部で試験をしているかもしれませんが、公に出てきているものはありませんでした。(私の調査不足かもしれませんが・・・)
私がメーカーへの聞き取り調査でも、はっきり根拠を持って耐用年数を証明するものはないようです。あくまでも目安ですが、瓦が60年以上の耐用年数があるというのも、神社仏閣などでは、それ以上使っている瓦もありますので、瓦はかなり長持ちをする屋根材と言えます。
瓦の施工価格、相場、概算
瓦工事の施工価格は、分かりにくいですが、全国で組織されている、瓦屋さんの組合があります。全日本瓦工事業連盟と言いますが、お助け隊の瓦屋さんがかなり昔になりますが、ここの下部組織である千葉県の組合が発行していた標準価格表があります。お助け隊の瓦工事の相場は、これを参考に出しています。
しかし、実際に見積を出してお客様とお話を聞いていると、東京など都市部と一部地域にかなりの標準価格表差があることがだんだんわかってきました。例えば茨城県全県に言えることですが、この組合の価格表は高いです。後に価格については詳しく述べたいと思います。まずはおおよその瓦工事の相場を瓦組合の価格表で見てみます。
全国組織である全瓦連の下部組織の価格表、標準価格表
この価格表は、施工面積が100㎡以上のものに適用されるとあります。各工事項目については、後で述べます。各工事項目は細かく分かれていて、細かい役物施工などは省いてありますが、瓦工事全体を網羅しています。まずは、この価格表を元に概算を出してみます。この価格と実際貰った見積とを照らし合わせてみてください。
標準価格表は、見やすいように別ページで綺麗な表にしました。また、各価格項目についても解説しています。ここトップページでは、この標準価格表の概説と、これを元にした瓦屋根の広さ別の工事概算価格を計算してみました。目安の1みたいなものです。実はこの標準価格表より低価格な工事屋さんがお助け隊の提携業者にもいて、この価格表は高いと言っています。
まずは、全国的に組織化された組合の価格表を元にした瓦屋根の工事費用概算を見ています。
標準価格表を使っての瓦屋根葺き替え工事相場概算
上の標準価格表を使った各屋根面積での瓦葺き替え工事費用を出しました。これは価格の保証ではありません。あくまでも価格表を使った概算になります。正確な見積は、屋根屋さんの現地調査の後、正式な見積を貰ってください。
屋根面積 | 葺き替え金額 | 空欄 | 空欄 | 空欄 | 空欄 |
---|---|---|---|---|---|
屋根面積・50 ㎡ | ¥ 1,150,000 | ||||
屋根面積・76 ㎡ | ¥ 1,521,000 | ||||
屋根面積・81 ㎡ | ¥ 2,223,000 | ||||
屋根面積・96 ㎡ | ¥ 2,556,000 | ||||
屋根面積・140 ㎡ | ¥ 3,357,000 | ||||
各金額は、概算の為 千円未満四捨五入 |
屋根面積50㎡、瓦を新瓦に葺き替える費用
サンプルの屋根、家A
・瓦屋根葺き替え価格、概算金額:¥ 1,150,000 50㎡詳細
屋根面積76㎡、瓦を新瓦に葺き替える費用
サンプルの屋根、家B
・瓦屋根葺き替え価格、概算金額:¥ 1,521,000 76㎡詳細
屋根面積81㎡、瓦を新瓦に葺き替える費用
サンプルの屋根、家C
・瓦屋根葺き替え価格、概算金額:¥ 2,223,000 81㎡詳細
屋根面積96㎡、瓦を新瓦に葺き替える費用
サンプルの屋根、家D
・瓦屋根葺き替え価格、概算金額:¥ 2,556,000 96㎡詳細
屋根面積140㎡、瓦を新瓦に葺き替える費用
サンプルの屋根、家E
・瓦屋根葺き替え価格、概算金額:¥ 3,357,000 140㎡詳細
上の標準価格表を使った各屋根面積での瓦葺き替え工事費用を出しました。これは価格の保証ではありません。あくまでも価格表を使った概算になります。正確な見積は、屋根屋さんの現地調査の後、正式な見積を貰ってください。
瓦の施工価格は、地域によってまちまち
全国的な組織である全瓦連の下部組織が出していた、標準価格表は、屋根屋に対して拘束力は弱いようです。東京や大都市の屋根屋さんで全瓦連に加盟している業者もこの価格表を守っていない業者さんもいました。逆に安い屋根屋さんとも提携しています。
私が認識している地域は、特に茨城県内の屋根屋さんはこの価格表に準じていないようです。あとは静岡県の藤枝市あたりの瓦の施工価格は他の地域より相場が低いことがわかっています。多分ですが、瓦の家が多く、屋根屋も多い、競争が激しくて相場が低いのでは?と想像します。屋根屋自身も詳しくその理由は分からない。東京での価格を言うと「そんなに高いのですか」と驚かれます。
屋根屋さんも地域の相場は、競合があるのでおおよその相場はわかっているみたいですが、他県での相場はあまり知らないようです。
茨城県の提携屋根屋さんの瓦施工価格例を紹介します。この価格はちょっと驚きです。ですから、瓦の工事を依頼するときにも、相見積は必須と考えます。
例えば、一般的な平部、平らな部分、本体部分とも言いますが、標準価格表では、施工費用が¥5,000/㎡、材料費は別になっています。茨城の屋根屋さんの価格は、材料込で ¥4,200/㎡(銀黒)です。約2倍の価格差があります。他の価格もありますので、全体的に半分とはなりませんが、かなりの価格差になるはずです。
瓦一枚の値段/瓦の葺き替えでの材料費の値段
スレート、ガルバリウム鋼板などは、街のホームセンターで一部販売しているので、凡その材料費はわかります。(ホームセンターの価格はお客様価格、エンドユーザー価格です)屋根屋が仕入れる値段はもっと安いです。因みに近くのホームセンターでガルバリウム鋼板を購入したところ、業者なのか聞かれて、15%ほど値引きがありました。多分個人での購入では値引きはないと思います。
でも、瓦はホームセンターに置いてありません。ですから価格の調査が出来ないのです。インターネットでの調査を一応してみました。瓦など材料の仕入れ価格は会社の秘密ですので、これを暴くのは反感をかってしまうかもしれません。ですから個々の価格はわかりませんし、聞いても答えません。
>>> 瓦一枚の価格インターネットで少し調べてみました。参考になれば幸いです。
瓦の断熱性能/瓦とガルバリウム鋼板とどちらが暑いか?
瓦を撤去して、ガルバリウム鋼板とか石粒付鋼板に葺き替える工事を良くやります。お客様の良くある質問は、「瓦から金属にしたら、夏は暑くなりますよね?」です。多分殆どの方が、金属材の屋根のほうが暑い、少なくとも内部は暑くなるだろうと思っています。
私もそうでしたので、偉そうなことを言えないのですが、瓦は厚さが2cm以上あって重く、太陽からの熱を伝え難いように思っています。実際はどうなのか?実験してみました。金属屋根のガルバリウム鋼板との比較になります。実際良く施工されている、断熱材が入った、横暖ルーフαSと瓦との比較実験をやってみました。
瓦屋根と金属屋根、ガルバリウム鋼板屋根と断熱性能の実験
実験では、釉薬瓦と横暖ルーフαS(断熱材付)との比較です。同じ夏の日に測定した、BOX内の温度変化を朝方から夕方まで測定したグラフになります。気温は最高37℃以上になりかなり暑い日でした。
瓦、横暖ルーフαSとも気温より高い温度になりましたが、瓦屋根の内部温度上昇は思ったより高かったのです。瓦そのものには断熱材の性質はありませんが、瓦と桟木との間に 1cm~2cmほどの隙間があり、これがほんの少しの断熱効果があると思っていました。
この実験BOXでは、瓦より横暖ルーフαSの方が断熱性能は上のようです。思っていた結果と違いましたか?瓦屋根は思ったほど涼しくなりません。また、瓦をガルバリウム鋼板に替えても夏はそんなに暑くならないことが少しは証明できたのでは?と考えています。ですから、瓦を金属にする予定のあるお客様は、夏もっと暑くなるのでは?という心配は無いと考えています。
>>> 少し詳しい、瓦の断熱性能について
>>> 実験の方法と実験BOXについて
重い瓦を軽いガルバリウム鋼板にするとどのくらい耐震に良いか?
重い瓦屋根を軽いガルバリウム鋼板に替えると屋根がかなり軽くなって「地震に強くなる。」とは良く言われることですが、ではいったいどれほど良くなるのか?すごく強くなるのか?少し強くなるのか?ほんの少しだけ良くなるのか?誰も言わないことです。
ましてや何か、数字は聞いたことがありません。それで、本来は多分屋根屋の仕事ではないのですが、いろいろ調べて、耐震診断の計算ができるようになりましたので、あるモデルで計算してみました。
瓦からガルバリウム鋼板に替えると、いったいどれほど地震に強くなるのか?そもそも耐震に強いとはなにか?数字か基準があるのか?それも誰も言わないことです。なんとなく強い、お客様もなんとなく屋根は軽い方が地震に強くなる・・・と信じています。それは間違いではありませんが・・・
簡単な概要、耐震診断の詳しい解説は別のページを参照してください。瓦を軽いガルバリウム鋼板に替えると耐震診断の耐震評点(巨大地震に耐えうる数値)が30%向上します。何故か?調べました。
義務化されたガイドライン工法、耐震工法
2022年、令和4年1月1日から、新築について瓦の「ガイドライン工法」が義務化されました。
1995年の阪神淡路大震災の後、広範囲に渡る瓦の落下、崩壊があったことを受けて、全瓦連(全日本瓦工事業連盟)と国は瓦の耐震工事方法として「ガイドライン工法」「耐震工法」を制定しました。これは従来「引掛け桟工法」と呼ばれたただ桟木の上に瓦を置いた工法では地震にあまりにも弱いという反省の為に制定された工法でした。
1995年は今から27年も前です。そして推奨された瓦の工法が「ガイドライン工法」・「瓦の耐震工法」です。しかし、新築や屋根の葺き替え時の義務化はされず、一部の屋根屋さんがやる工法でした。一部の瓦屋根屋さんは施工費が高くなる、契約が取りづらくなるとの理由で「ガイドライン工法」をやらない業者さんも存在していたのです。
(私の家も2008年に瓦屋根の葺き替えを実施しましたが、ガイドライン工法ではありません。屋根屋は知っていたと思いますが、私は知りませんでした。何の説明も無かったのは残念です。)
>>>サイトのガイドライン工法についての詳細ページ
国交省の公告PDF:ガイドライン工法・耐震工法の法律改定:国交省のPDF
この検索を実施後、リンクからガイドライン工法の義務化のPDFが開かれます。
全瓦連の公告:
住宅産業新聞社:
国交省、新築の瓦屋根はガイドライン工法を義務化に=瓦屋根の告示基準改正
参考図書、論文、書籍、メーカーカタログ
・CASBEE「すまい戸建」:著者:村上周三、秋元孝之、伊香賀俊治、岩村和夫、清家剛、近田智也、南雄三 共著、出版社:株式会社建築技術、編者:日本サステナブル・ビルディング・コンソーシアム
・木造住宅の耐震診断と補強方法:2012年改訂版、発行:日本建築防災協会、国土交通大臣指定耐震改修支援センター、著作者:「木造住宅の耐震精密診断と補強方法」改定委員会(2004年改訂版)、委員長:坂本 功
・全瓦連・一般社団法人 全日本瓦工事業連盟、http://www.yane.or.jp/kawara/guide.shtml
「令和4年1月1日から瓦屋根の緊結方法が強化されました」の記事
・住宅産業新聞社:https://www.housenews.jp/executive/18398
「国交省、新築の瓦屋根はガイドライン工法を義務化に」の記事
瓦屋根トップページの記事は以上です。